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沖縄で伝わる大切な言葉「ぬちぐすい」とは?

「ぬちぐすい」の由来

沖縄の方言で「ぬちぐすい」という言葉があります。沖縄の言葉で、「ぬち」は命、「ぐすい」は薬、つまり、「ぬちぐすい」とは、食べものが薬になるくらい効果があるという意味です。特に台風などで自然災害も多かった沖縄では、医食同源として先人から食事の大切さが受け継がれてきました。

 「ぬちぐすい」という言葉の原点は、琉球王国時代に書かれた琉球食療法の指導書「御膳本草」です。現在で例えると、栄養学と食品成分表を合わせたような本です。この指導書の著者であり、医師である渡嘉敷親雲上通寛(とかしきぺーちんつうかん)は、病気だった琉球王国17代王様 尚灝王の治療をしようと中国(北京)に留学し、漢方や食事療法などを学び、帰国後、王の侍医となりなりました。

中国で学んだ内容を元に、琉球独自の食材の効能、食材の組み合わせなど食事療法をまとめ本にしました。大災害の際、この考え方が民間にも広がり、今でも「ぬちぐすい」として受け継がれています。

 

※(写真の「御膳本草」は、1964年當間清弘により再刊された復元本です。)

 

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琉球料理と沖縄料理の違い 

沖縄には、琉球料理と沖縄料理があります。琉球料理とは、琉球王国時代に宮廷で食べられていた宮廷料理と、民間で伝統的に受け継がれていた料理です。沖縄料理は沖縄県の郷土料理で、第二次大戦後アメリカの影響を受けて作られるようになった料理や、伝統的に伝えられた料理です。「ぬちぐすい」の原点は、琉球の宮廷料理ですが、沖縄料理もその考え方が伝えられています。

 

沖縄独特の食文化が誕生した理由は、琉球として1つの独立国だった時代から他国との交流が盛んに行われていたためです。

日本が、中国との交流がない中、琉球では、1372年ごろから中国との交流が始まっています。

500年続いた琉球時代の中で、国王が交代する際、「冊封」(さっぽう)という中国から国王として承認を受ける式典が行われていました。この式典が開催される際には、中国から使節団である冊封使(さっぽうし)が約430~500名が訪れます。琉球の人々は、この冊封使をもてなそうと中国へ渡り中国料理を学び、琉球の料理に取り入れました。また、薩摩との交流が始まると、料理人が薩摩へ渡り日本料理を学びました。琉球料理は、時代に合わせ変化し、独特の食文化を作り上げて行ったのです。

このように琉球料理は、「ぬちぐすい」を基本に、中国料理と日本料理を取り入れてできたものです。

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沖縄は長寿県って本当?

長寿日本一として有名になった沖縄県ですが、食生活の変化により、実は、長寿ランキングが下がっています。現在、県全体で「長寿を取り戻そう!」と目標を掲げ沖縄県健康課が計画した「おきなわ21」に基づき、『ぬちぐすい』や食生活を見直す活動に力を入れています。

 

厚生労働省都道府県別生命表の調査「都道府県別にみた平均余命」によると、沖縄県は、1975年〜1985年の10年間、男女ともに1位、2位の座を維持し、1985年「世界長寿地域宣言」をしました。この調査は5年ごとに行われるのですが、男性ランキングが、1995年4位から2000年に26位へと5年間で急に下がる自体が発生しました。この急落は、「沖縄26ショック」といわれ、全国的にニュースになりました。

2017年のデータでは、男性36位(80.27歳)、女性7位(87.44歳)となっており、沖縄は、もはや長寿と言えない状況になっています。この理由として、車社会の普及により運動不足や、食生活の欧米化、移住者が多く伝統的な沖縄家庭料理が減り、「ぬちぐすい」のが、考え方が食生活から薄れていっているのではないかと考えられます。

 

ちなみに、2018年の「都道府県別にみた平均余命」の1位は、男性は滋賀県、女性は長野県です。また、厚生労働省から公表された平成27年市区町村別生命表「市区町村別平均寿命」では、沖縄県北中城村の女性が3年連続1位となり、沖縄県一部地域では長寿をキープしています。

 

 

とは言っても、沖縄の食材はすごい!

沖縄県は、本土に比べ紫外線が強く、平均気温23度の亜熱帯気候で台風の通り道です。沖縄で栽培されている島野菜は、紫外線や雨風に強く、抗酸化作用があり、ビタミンやミネラル類が豊富に含まれる野菜が多いのが特徴です。抗酸化作用とは、紫外線やストレスなどで細胞ついた細胞を修復し、老化(体の酸化)を防ぐ作用のことです。

伝統農産物の島野菜は28種類あり、一部は昔から薬草として使用され、現在も生薬や民間薬として用いられています。そのため、島野菜の栄養素や効能は、「ぬちぐすい」や「長寿」に関係があると期待され、改めて注目されています。

 

沖縄県農林水産部は、健康長寿県として注目される沖縄において、戦前から導入され、伝統的に食されてきた地域固有の野菜を【伝統農産物】(別名:島野菜)と定義しました。

次回は、そんな沖縄の【伝統農産物(島野菜)】についてご紹介します。

 

 

 

執筆担当: 宮澤かおる(管理栄養士 沖縄料理研究家)

1981年生まれ 聖徳大学食生活専攻を卒業後、同大学の助手として勤務。栄養指導論を専門分野とし、講義サポートに携わりながら、管理栄養士を取得。その後、病院勤務を経て、現在は、伝統食材である沖縄食材を使った料理を広め、「ぬちぐすい」をモットーに活動し沖縄料理研究家として発信。調理アシスタント、カウンセリングと合わせて広めている。